知っておきたいこと 光熱費 超省エネ住宅 熱交換換気システム

熱交換換気システムで光熱費節約できる?導入後の電気代と感想。

投稿日:2017年11月15日 更新日:

省エネで快適な家づくりに関心が高まると
気になってくる機器がありませんか。

そう、熱交換換気システムです。

名前からして省エネになりそうな予感大ですからね。

熱交換のタイプは大きく2つ。

・熱と水蒸気を交換する全熱交換型

・熱のみを交換する顕熱交換型

換気方法について

・ダクト式セントラル型(全館換気)

・ダクトレス式(局所換気)

のいずれかと組み合わせられることが多いです。

つまり2☓2=4種類に大別されます。

更に、あわせてキッチン、洗面、浴室、トイレ、
それぞれの換気もあわせて考えないといけません。

高気密・高断熱住宅では
適切な換気計画と建物内外の気圧のバランスが
快適さに大きく影響するからです。

参考:高断熱住宅にオススメのレンジフードは?同時吸排気式は必須?

「どっちが良いの?そもそも必要なの?」

「光熱費削減効果でもとがとれるの?」

そんな悩みから解放される方法を書いていこうと思います。

■先に結論だけ書いてしまうと。。。

「断熱性が高く全館空調する家ならオススメ」

で、快適性を高めたいなら導入して損はありません。

「もとをとれるかどうかは
 暖房負荷を計算すれば目安はつく。」

けれど、その人が「今住んでいる環境での光熱費」
に対して損か得かということは難しいです。

部屋を個別に冷暖房するやり方から
全館空調にすると、必ず光熱費はあがります。

そのあがった光熱費を削減できるかな、、、
という程度に考えたほうが無難です。

光熱費は家の性能だけでなく、
広さやライフスタイル、ライフステージによっても変わってきますから。

また、地域や建物の立地・規模によって違いますが、
東京以西ならQ値1.6程度(Ua値で0.35程度)、C値で0.5程度が
断熱気密性能が導入の目安になるかと思います。

ポイントは、

熱交換型換気システムを導入するメリットは
経済性よりむしろ快適性が更に高くなる点にある。

そう考えて導入に踏み切ってください。
後ほど詳しく説明します。

具体的な選び方についてまとめると

夏高温多湿 冬乾燥なら
 ⇒全熱型(熱+水蒸気)
夏乾燥 冬湿潤なら
 ⇒顕熱型(熱のみ)
冬超低温・多雪
 ⇒つけない ※凍る・埋まるから

という前提にたつと

東京以西の環境で、熱交換換気システムが有効な状況なら
国産の中でも三菱のロスナイ(全熱交換型)は歴史が古く、
様々なカスタマイズが可能なのでオススメです。

岐阜の恵那で工場見学できます。
(自邸では事情で別の機種を入れていますが
関わった物件で導入したことはあります。)

■熱交換換気システムは省エネ機器

そんなことは当たり前かもしれませんが、せっかくなので改めて考えてみてください。

1.あなたはなぜ、熱交換換気システムを検討しているのか。

2.なぜ、熱交換換気システムが重要なのか。

3.それぞれの答えについて、それが自分にどう役立つのか?

・・・

熱交換換気は省エネ機器です。

省エネ機器はエネルギー削減によって、経済メリットを生み出します。

機器が壊れるまでに「もと」をとってはじめて経済メリットが出てきます。

・機器を長く使う

・エネルギーを多く使う

このいずれかを満たす必要がでてきます。

ここで重要なことは

もともと全館空調で暖房していた家庭は、
熱交換換気システムを入れると経済的なメリットが出る可能性が高い、ということです。

一方、部分間欠空調+ダクトレスの局所換気から
全館空調を前提としたダクト式セントラル型の換気方式に変更する場合、
熱交換型を組み込むとだいたい坪1万円ぐらいイニシャルの建築コストがアップします。

モーターが10年で壊れるとして、、、

どうでしょう。年間3万〜4万円程度、光熱費を削減できるでしょうか。

引っ越す前のアパートやマンションで
もともと光熱費をおしみなく払って、全館空調(冷暖房)しているでしょうか。

ドイツなどのヨーロッパでは暖房にエネルギーを日本の数倍消費しているため、
熱交換換気システムが普及しやすい、という特長があります。

熱交換換気システムの導入によって、快適性の向上だけでなく経済メリットを受けやすい環境にあるのです。

しかし、日本では近代以降も火鉢やストーブという採暖の文化で過ごしてきました。
エアコンが普及した現在でも部屋ごとに暖房や冷房をおこなっていることがほとんどです。

それは我慢を強いている、という考え方もできますし

そういう暮らし方や住環境は世界的に悪いとか遅れている、というような議論をするのは不毛です。

節約が当たり前にできていると、熱交換換気をわざわざ入れる必要はないとも言えます。

整理すると

熱交換換気システムが有効になるのは

全館空調により、
高いレベルの快適さを実現したい時に限られます。

・全館空調により高いレベルの快適さを実現する。
 ↓
・光熱費が増える。
 ↓
・熱交換器を入れる。
 ↓

メリット1:新鮮空気が入ってくるところの快適さが高まる。

メリット2:汚れた空気を出す時に熱を回収して光熱費を削減できる。

という結果が得られます。

この時、光熱費を削減する前提が

引っ越す前の家の光熱費との比較ではない

ということさえ注意しておけば大丈夫です。

最近では、新築時の一次エネルギー消費量の計算もできますが

・引っ越す前の自分たちの建物の広さと性能
・将来のライフスタイルの変化(家族が増える)

まで含めて検証しておかないと、
光熱費が実際に上がってしまう可能性は
普通にありえます。

参考:省エネ住宅なのに光熱費が高い?失敗の理由

■熱交換換気システムの検討ポイントは2つ。

ひとつめは
省エネ=節約思考は
後回しがオススメです。

実は熱交換換気は機器によって設置方法や能力が異なり
工事費はダクトや部材の金額によって変わります。

加えてメンテナンスのやり方やフィルターの価格や交換頻度も
異なるので光熱費だけで判断することはオススメしません。

必ずドツボにハマっていきます(笑)

もうひとつは、「その人のライフスタイル」というところ。

どんな家族にも各階1台のエアコンで全館暖房の
低燃費住宅が良いとは限りません。

この記事を書いていて今更ながら気づいたのですが、

私が超省エネ住宅を建てた経験から、
これから建てようとしている方にお伝えしたいことは

省エネ=光熱費節約思考で
家を建てる際の様々な判断をしないほうがいいよ〜、

ということです。

入り口は省エネ=節約&快適でも良いのですが、

つまるところ、
目指しているライフスタイルにあっていないと
節約にも快適にもならないと思うのです、、、

あくまでライフスタイルが出発点で、
どんな暮らしが豊かと感じるか、
にフォーカスして判断・決定していくことを
心からオススメしたいです。

では、ざっと
それぞれのメリット・デメリットを
おさらいしていきましょうか。

ポイントは夏と冬の湿度です。

■全熱交換と顕熱交換。メリットとデメリット

全熱交換型のメリットは
数値上の効率はそんなに高くない(60%前後など。風速による)
けれど水蒸気もやりとりする分、
除湿や加湿のエネルギーを考慮すると総合的には効率が良い。

特に太平洋側の気候にあっていると言えます。

夏場はエアコンで除湿された室内環境
冬場は加湿された室内環境が
キープしやすい点がメリット。

デメリットとしては
トイレや浴室や洗面脱衣室を接続すると
ニオイも水分によって換気システムの中で
移ってしまう可能性があること。

顕熱交換型のメリットは
水分の移動を伴わない
完全に熱だけが移動する仕組みなので
水分やニオイの逆流のリスクはありません。

デメリットは地域の気象条件によっては
特に太平洋側の気候では
夏は高温多湿な空気が冷やされて湿度は更にあがり
冬は低音乾燥な空気が温められて更に乾燥するなど
機械的な加湿や除湿が必要になる点です。

夏がカラッとしている内陸性の気候や
冬に湿度が高い気候によりフィットしていると言えます。

■自邸では顕熱交換型を採用。

もともと全熱交換型にしようと思っていました。

水蒸気を回収したり排出できたほうが
快適な気候だからです。

軽度であっても加湿と除湿の機能を
換気システムに持たせられますから。

そのためにわざわざ浴室の換気を分けて
独立した同時吸排の全熱交換型換気扇を入れたほどです。

キッチンにも同時吸排式の換気扇が入っています。

熱交換型ではありませんが、
建物内部の気圧のバランスが室内環境にとって
重要であることはこちらのブログで書いたとおりです。

参考:高断熱住宅にオススメのレンジフードは?同時吸排気式は必須?

しかし、最終的には発注の際の確認不足もあって
空調メーカーから顕熱型を推奨されてそれを採用しました。

機器はzehnder社のConfoAirというシリーズ。
ヨーロッパではメジャーなメーカーで、
スイスやドイツの技術者や研究者との共同プロジェクトであったこと
や空調メーカーの協力もあり、その機種にしました。

熱交換率は顕熱で90%程度あるので、
当時でも充分高性能な部類だと思います。

写真は設置している途中の様子。
屋根裏ですが、メンテナンスしやすいようにしています。

また、現在の日本の機器にも普及している
・バイパス機能
(例えば夏場に夜の外気が室内より下がった時に、熱交換せずに吸気する)
・一時的強運転
(ニオイの出る料理をした時などに、一時的に風量=換気量を高めるモード)
・消音ダクトパーツ
(ダクト式セントラル型換気システムの場合、配管の接続によって
機械本体の運転音や、隣の部屋の音が換気口から聞こえることを防ぐ)
などがそろっており、ダクトも圧力損失の少ないものでした。

■メンテナンスやランニングコスト

自分はあとでフィルター交換について詳しく知ったのですが、、、
OA(外気からの吸気)
RA(室内からの排気)
に1枚ずつ、半年に1度は交換が必要です。

2枚セットで5400円。

これを高いと感じるか安いと感じるか。

うちでは高いと感じたので、
新品1枚をOA側に使い、
OA側で使った後に洗浄したものをRA側に使い、
RA側で使うと油分が付着するので廃棄
というかたちで使っています。(涙ぐましい。。。)

つまり、1年で1セット5400円。

それも含めて節約した光熱費で回収できているかは、
うーん、どうなんでしょうね。。。

一日中バイパス機能で運転させたら計算できるかもですが
春や秋の中間期も含めるとあまりモトはとれていないのかも。。。

ちなみにZehnderのマネジャーの方にフィルター交換について相談したら、

「ゴシゴシ洗浄してリユースなんて当たり前にしている、
 なんでリユースしないの?」

という勢いでしたから、きっと大丈夫なんでしょう 笑。

余談ですが、換気システムのための光熱費は月間500円ぐらいです。

メンテナンスとしては、
これらのフィルター交換ついでに熱交換器本体内部を掃除。
2〜3ヶ月に一度は外部のOA側の外部ベントキャップを掃除しています。

熱交換換気をオフにする必要があるので
リモコンの近くにスイッチを設けておくと良いです。

写真左下の黒い目印のついたスイッチです。

また、外部のOA側のガラリは手がとどくような位置に
設けることをオススメします。

水路や池などあるなら虫がたくさんひっかかります。

OA側のガラリから熱交換換気システムの本体までは
極力短く設計することも重要です。

■使ってみての騒音と、加湿器との組み合わせ

騒音については、いわゆる局所換気の換気扇に比べると
はるかに静かに感じると思います。

また、本体そのものは静かですが
ダクト内部の風切り音がします。

うちの機器では

強強(何か特別にニオイがきになる時)
強(あまり使わない)
中(日常)
弱(就寝)
微(長期外出時)
と風量を切り替えられます。

下の写真は強強モード。右下にtの文字が表示されます。

こちらはバイパス運転となる温度の設定画面。
快適温度を設定すると夏は外気温が下がると
熱交換せずに直接室内に入ってきます。

弱以下だと就寝時でも換気の音はほとんど気になりません。

逆に中以上だと、就寝時にあーついてるね、とわかりますが
起きていれば気になりません。

ちなみに
うちは2F洋室から固定階段であがれる屋根裏があり、
そこに設置しています。

アイキャッチ画像と同じ写真ですが。
柱の奥に、横向きに吊り下げられています。

その2F洋室では弱運転でも
耳をすませば本体付近の風切り音が聞こえます。

そして顕熱交換型の冬場の乾燥対策。

加湿器が必須と思います。だいたい11月中旬頃には出てきます。

この加湿器が音出すんですよね、、、、
といっても風の音なので仕方ないのですが。

静音モードならほとんど無音なので
音楽聞いたりご飯食べたり、家族の時間は
静音モードにします。

ただ、静音モードでは
換気量に対して絶対的な加湿量が不足してしまうので
おまかせモードでの運転が必要ですね。

それでも1台で1F、2Fの湿度を補ってくれてる
充分な能力があり、気に入っています。

■熱交換型を採用することで得られる価値=快適さ

省エネのために熱交換型を入れること自体は
悪くないオプションだと思います。

しかし、それ以上に素晴らしいのは
家中の部屋がどこにいても快適だということです。

特に小さな家で、吸気口が居住スペースと
近い場合は有効だと思います。

例えばリビングのソファでくつろぐ時に
近くに外気の新鮮空気をとりいれる吸気口が近くにあると
冬寒いですよね。

熱交換換気にすることで、それをかなり軽減できます。

特に顕熱交換の場合は寒さを感じることはほとんどありません。
冬季夜間の室内の温度低下も1度あるかなぁ、ぐらいです。

特にうちのように部屋ごとに冷暖房の機器がない場合は
必須とも言えるほどオススメします。

逆に広い家で個別に冷暖房設備を入れられるなら

熱交換換気をわざわざ入れなくても
部屋ごとに熱や湿度をコントロールできますし

広い室内空間があったり
廊下などの共用スペースが充実していたり、
新鮮空気の取り入れ口をリビングに設ける必要もないので
熱交換型換気システムをいれなくても
快適さは損なわれないように思います。

後は、熱交換とは関係ありませんが

副次的なメリットとしては
ダクト式セントラル型換気システムの場合
換気口となる建物の開口部が少なくて済むので
外観上は美しくなりますね。

なお、個別型の熱交換換気システムについては
モデルハウスでは体感したことがありますが
実際に暮らしたことはないので評価はできません。

冬場、夏場ともに熱交換をおこなう
エレメント部分で結露する可能性があるので
清掃とカビ対策は必須と思います。

また、管理すべき機械が増えることは
故障するリスクも増えることにつながりますし、
ダクト式に比較して本体と施工費含めた
コストはそんなに安くない印象です。

ダクト内の清掃は大変ですから、
それが不要になることはメリットですけど。。

そんなわけで、まとめにはいりたいと思います。

■どの部屋でも快適に過ごしたいなら熱交換換気はオススメです。

自分がどの程度の快適さを実現したいのか
ライフスタイルで選択するのが良いと思います。

超低温になる北海道や東北・北陸・長野県の高地などは別にして
私が住んでいる滋賀県や東京以西の気候であれば
採用すれば快適さはあがると思います。

全熱交換型で国産のものが良いと思います。

ただし、費用対効果、光熱費節約の効果で判断すると
そんなに得にはならないと思います。

それに、換気計画において
熱交換換気システムやその効率より
はるかに大事なのは、

外部の給気口の位置と、
室内の給気と排気の数と位置です。

これについては改めて書いていきたいと思います。

今日23時30分現在のリビングダイニングは
室温23.5度、湿度52%。快適です。
暖房パネルは32度になってます。
加湿器も運転中です。
1日の全消費電力量は10kwh前後です。
暖房を入れる前が5kwhなので約倍になりました。
太陽光発電が15kwhぐらい発電しているので
まだ賄えている感じです。

-知っておきたいこと, 光熱費, 超省エネ住宅, 熱交換換気システム

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