11月中旬に入っていっきに冷え込んできましたね。
超省エネ住宅であれば迷わず選びたい全館空調。
どんな暖房(冷房)にするか、悩ましいですよね。
冷え性に悩まされている方ならエアコンが苦手と感じておられたり、からだを芯から温めてくれる床暖房や薪ストーブなどの輻射暖房を検討している方も多いと思います。
そして、いざ家づくりの相談を始めてみると
「最近の住宅は断熱性能が高いので
エアコンで充分に暖まりますよ。」
と説明されて、ますます迷われることもあるかと思います。
実際、断熱性能が高くなれば部屋はあたたくなります。
部屋の上下や外周と、部屋の中心との温度差が小さくなると体感温度があがり、
暖房の設定温度も低くて大丈夫ということは数式として理論化されています。
超高断熱住宅をいくつか訪問した実感としても間違っていないと思います。
しかし、その家、その部屋が
「その人にとって快適か」
となると答えはひとつではないところが空調の難しさですよね。
暖房や冷房は絶対的な答えはなくあくまでその人の感じ方次第、
つまり程度問題だからです。
そこに設備の費用や光熱費が絡んでくるのでややこしくなります。
特に冷え性気味の方には、身体を直接温める輻射暖房だからこそ得られる気持ちよさ、快適さが必ずあると思います。
私の家では輻射暖房のひとつであるPS HR-Cに熱交換換気システムを組み合わせた全館空調を採用しました。
妻が冷え性気味だったこともあり
「輻射暖房をメインの暖房として採用した全館空調」
を実現したかったのです。
丸4年間住んでみた実感として冷え性気味な妻も快適に過ごせており、オススメできます。
ちなみに、冷え性に配慮した家づくりを希望しているけれど、リフォームなどで建物の断熱性能に手をつけられない場合は
身体に直接触れる床材の選び方で体感温度をマシにするなど暖房以外にも工夫できるポイントがあります。
うちの家で実践したその他の方法についてはこちらで紹介しています。
参考:妻も絶賛!冷え性対策におすすめの無垢フローリングは「桐」。
ひとことで言うと
「空気を汚さずに部屋全体を効率的に暖められる」
=エアコン
と
「身体を直接温め、芯から温まる」
=コタツや薪ストーブ、床暖房
のいいとこどりができる暖房です。
エアコンやファンヒーターのように室温を上げる暖房はどうしても乾燥しがちです。
輻射暖房であれば室温は低めでも快適さを感じやすいので湿度の低下を防ぐことができ、乾燥しにくくなります。
ちなみに私たち家族が引越し前に住んでいたのは2008年当時に新築された4階建てRCマンションの2階。
上下と両隣が部屋といういわゆる「中部屋」に住んでいてエアコン1台で快適に過ごせていました。
それでも引っ越した今のほうが快適だと、妻が言ってくれています。
ちなみに、輻射暖房導入のネックとなりがちな暖房システムのイニシャルコストと年間の暖房コストは、断熱性能を高めることで抑えることができるとわかりました。
うちの場合
導入費用は総額180万円程度でHR−Cという輻射暖房のラジエーターパネルと熱源のヒートポンプが導入できています。
光熱費は延床面積30坪の家を24時間暖房してどの部屋も20度〜22度をキープして年間3万円程度です。
更に、PS HR-Cなら冷房もできるためエアコンを設置する必要もありません。
全室に温水床暖房+エアコンをいれるよりもイニシャルコストは確実に安いです。
その快適さを言葉で伝えることは難しいのですが、できるだけわかりやすく書いていこうと思います。
冷え性気味の方が快適だと感じる空間づくりを目指す時
「冷たくはない温度」が「快適」とは限らない、
ということに気をつけたほうが良いです。
詳しくは様々な高性能住宅をまわって妻と体感温度を確認した内容を
こちらの記事に書いていますのでよろしければ参考にしてください。
参考:超省エネ住宅で失敗しないために知っておきたいこと。【前編】
現在主流となっている
・建物の断熱気密性能を確保して
各階1台のエアコンで全館暖房する
というアプローチの場合、
各階にエアコン1台で充分に家を温めることが技術的にできるようになって光熱費シミュレーションでは良い数値がでても
実際に住んでみてから
「床暖房で身体を直接温められたら、もっと快適なのに」
と感じる事は充分あり得ると思います。
私達が育ってきた環境では、コタツやストーブなど身体を直接温める暖房に慣れ親しんできたという、快適さの記憶があるからですね。
また、住まいの断熱性能が低くても圧倒的火力のある薪ストーブや暖炉などでカバーできることはあります。
しかしながらトイレや洗面脱衣室は寒い、といった温度差やヒートショックの問題は残ってしまいがちです。
このように整理すると
身体の芯から温まる輻射暖房で全館空調することができれば両方の悩みを解決できることがわかります。
「冷え性」 「対策」 「効果的」
などのワードで検索すると
「エアコンは部屋を暖めるが身体を温めない」
「コタツや湯たんぽなどが身体を直接温める方法がオススメ」
などがヒットしますね。
夏をもってむねとすべしの記事でも触れたように
日本の家は湿度の高い夏向きに建てられており
隙間だらけの家では
冬に部屋全体を暖めることには不向きでした。
参考:なぜ日本の家は「夏をもって旨とすべし」? 温度よりも湿度がカギ。
そのため火鉢や囲炉裏、おくどさん、お風呂をはじめ、こたつや湯たんぽ、ストーブ、カイロなど、直接身体をあたためてくれるもので暖をとる、「採暖」の文化が発達してきました。
FF式の石油ファンヒーターやガスファンヒーターの温風で直接身体を温めているような使い方をしている場合もありますよね。
住宅の断熱気密性能があがった現在でも床暖房を希望される方は多いのは、私たちが体験的にその気持ちよさを知っているからではないでしょうか。
福島の原発事故が起こるまで、オール電化契約+深夜電力を使った蓄熱暖房機を採用するご家庭も多かったと思います。
・機械の中にある大きなレンガの塊を温めるもの
・建物の基礎そのものを温めるもの
いずれも暖房としては、火鉢や囲炉裏やコタツと同じく「冷たい」と感じる部位を直接あたためられるため非常に気持ちよいですし、寒さを感じにくいです。
しかし、それらはエネルギーの消費量が莫大で原子力発電を前提とした深夜電力ありきという別の問題があります。
そこで注目したいのが輻射式冷暖房システムであるPS HR-Cです。
これは日本の伝統的な採暖の文化を現代的に解釈したものだと言えます。
熱源をヒートポンプにすることで、エネルギー効率に優れ、光熱費も少なくて済みます。
参考:PS HR-C(輻射)放射冷暖房の熱源はヒートポンプがオススメ。
うちではそのシステムの放熱(ラジエーター)パネルを
1Fのソファやダイニングチェアの近くに1台
2Fの洗面脱衣室に1台
設置しています。
そばにいくと直接じんわりとあたためられるのを感じます。
エアコンで温風をふきつけられる感覚とは全く異なります。
イメージとしては、壁そのものから暖房されているような感じです。
といっても熱気をバンバンに感じるのではなく、縁側でひなたぼっこしている感じに近いでしょうか。
このような身体を直接温める暖房の欠点は、断熱性能が低いと、その場から動きたくなくなることです笑
また、断熱性能を高めても放熱パネル(ラジエーター)から離れた場所は直接温めたり冷やしたりする効果は薄れますし、それを補うためにパネルを増やすとその分高価になってしまいます。
そこでダクト式熱交換換気システムを組み合わせます。
これによって設置する輻射暖房のパネルの数を最小限にしつつ、各部屋には温められた新鮮な空気がいきわたらせることができ、温度ムラを軽減することができます。
断熱気密性能が低ければ大変高価になるシステムが、断熱気密性能を高めると合理的なシステムになり得ることが実際に導入してみてわかりました。
もともと私が超省エネ住宅を建てようとしたきっかけはいろいろな御縁が重なったからでした。
当初は建てることが目的となってしまっていましたが友人のドイツ人の建築家の助言によって
冷え性気味の妻にとって快適な家、家族が健康に暮らせる家の実現を目標におくことができました。
結果、超省エネ住宅を手段として捉えることができ、私達にとって理想的な空調の導入、そして快適な空間につながりました。
輻射暖房の満足感を得たい方なら
・断熱性能を充分に高め、少ないパネルでも全館暖房できるようにして
・温かさについて満足感を得たいところの近くにパネルを設置して
・熱交換換気システムで各部屋の温度のムラを解消する
このステップが参考になる方もいらっしゃると思います。
ただ、
・もっと重度の冷え性の場合にも対応できるのか、
・もっと寒冷地の場合は光熱費がかかるのか、
などはケースによると思います。
あくまで快適さのものさしは、人や気候によって変わるものですが最適な暖房を検討する時の一助になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
なにかひとつでもお役にたつ内容があったなら嬉しいです。