仕様 知っておきたいこと

断熱性能Ua値の目安は?HEAT20 G1とG2の選び方

投稿日:2018年2月28日 更新日:

少し前にZEHに必要な太陽光発電の出力について書きました。

参考:ZEHに必要な太陽光発電の出力

その時にあらためて断熱の基準について整理してみたのですが、
HEAT20のG1とG2の外皮性能グレードのグレード分けが
とても良くできているなぁと感心しました。

ちなみにG1よりもG2のほうが外皮性能は高いです。

で、新築住宅はこの「G2」が標準になっていくと思います。

■HEAT20 G2グレードとは

そのG2グレードとは、

私が住んでいる「5地域」の場合でいうと

「次世代省エネ基準の仕様の住宅で部分間欠空調をする場合と
同程度の光熱費で、全館空調が出来る」

という外皮性能を目安にしているということです。

出典:http://www.heat20.jp/grade/index.html

つまり、外皮性能を示すUa値(外皮平均熱還流率)の仕様を

どの程度にするか迷った時に、

5地域に住んでいるなら

・全館空調するならHEAT20 G2グレード

・部分間欠空調ならHEAT20 G1グレード

というのが、ひとつの目安になると思います。

■HEAT20 G2グレードを理解しておくとセールストークを見分ける時に役立つ

たとえば、
「エアコンを各階1台設置で全館空調できる住まい」

というようなセールストークをしている住宅会社があった場合に

1)HEAT20 G2グレード相当のUa値を満たしていているかどうか

→満たしていない場合、実際に住んでからの光熱費が
予想している程削減できず、むしろ増える可能性がある。

2)一次エネルギー消費量がZEHをクリアしているかどうか

→ZEHを達成するための太陽光発電設備が、
全体の予算バランスに対して大きめになっている可能性がある。

というように推測することができます。

逆に言えば、ちゃんとわかっている建築士や住宅会社であれば

・住まい手に全館空調の希望があるかどうか、

・住まい手に全館空調の提案が必要かどうか、

をヒアリングで判断し、提案してくれます。

それを住まい手の立場から考えてみると

建築士や住宅会社の提案がG2グレード以上であれば、

全館空調が可能かつ全館空調をすすめていると考えれば良い訳です。

ただし5地域の場合は

G2グレードで全館空調にした場合、

次世代省エネ基準で部分間欠空調した時と光熱費はほぼ変わらない、

ということは

全館空調により快適さはあがるものの

省エネによる光熱費削減効果>初期投資 とはならない可能性があります。

つまり、全館空調をすると、断熱の仕様アップ分は単純にコストアップになる可能性が高いです。

また、

省エネ住宅なのに光熱費が高い?失敗の理由

でも書いているように、

世界最高峰の「パッシブハウス」の基準であっても
個々の家庭のライフスタイルによって実際の光熱費にはかなりの差が出ており、

更に言えば、それらを平均した値は基準値にほぼ収まる
ということまでわかっています。

クルマのカタログ燃費に対する実燃費と違って、
実際の燃費データが集まる程、基準に近づくと推測できます。

そのためには、その仕様の家が建築されていく必要があるわけなので
経済的なメリットが大きい北海道や東北などの比較的冷涼な気候の地域が
外皮性能については今後もリードしていくのかな、と思います。

そういう意味で、5地域の家づくりというのは、
どこでバランスをとるのか、判断が難しいとも言えます。

※より北に近い、暖房負荷の大きい地域では、エネルギー削減量は高くなり、
次世代省エネ基準で部分間欠暖房している時より
HEAT20 G2グレードで全館空調する時の方が一次エネルギー消費量は少なくなります。
=初期費用を回収出来る可能性があがります。

■まとめ

では、結局のところHEAT20 G2グレードはおすすめなのか?

ひとつ明確なことは

5地域で全館空調しないなら、G2グレードは必要ない、ということです。

つまり、住まい手としては

・両親との同居や介護。

・自分たちの老後や介護。

などの

ライフイベントを含めて自分たちがその家に住む期間を考えたうえで

様々なオープンハウスやモデルハウスの体験を通して

「全館空調の快適さが必要かどうか」

について、自分たち家族の考えのものさしを持っておくことを

強くおすすめします。

個人的には、

全館空調すると光熱費削減にはつながらないかもしれませんが、

エアコンなどの家電機器のイニシャルコストや買い替えコストを減らせる可能性が高く、

断熱工事を完成後に追加することは難しいため、

ローンを30年以上組むのであれば、G2グレードにしておくことをおすすめします。

このブログで紹介している自邸の技術資料はこちらにまとめてあります。

追記:
G1グレードの住宅で部分間欠暖房(冷房)をおこなっても、家そのものは快適と感じる温熱環境が実現できます。

それは、暖房(冷房)している部屋から暖房(冷房)していない部屋に熱が逃げて行くからです。

断熱住宅は家の外に熱が逃げにくく、また家の中は24時間換気によって、
空気とともに暖房していない部屋にも熱が移動しやすい環境にあります。

その結果、それなりに全館空調しているのに近い状況になります。

では、全館空調と部分間欠暖房決定的な差は何か、といえば
ずばり温度ムラだと思います。

もう少し詳しく言うと空間的なムラと時間的なムラです。

HEAT20のG1、G2のそれぞれのグレードの基本的な考え方とは関係ないかもしれませんが、
こちらの記事で詳しく書いてみます。
(参考):高断熱住宅では個室暖房(冷房)が限りなく全館空調に近づく。

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