知っておきたいこと

高断熱住宅では個室暖房(冷房)が限りなく全館空調に近づく。

投稿日:2018年5月18日 更新日:

高断熱住宅における「個室暖房(冷房)」という考え方は有効なのか。

(タイトルと本文を加筆・修正しました 2018/5.22)

お世話になった松尾さんが先日のFacebookの投稿で

(ここから引用)

「高断熱住宅で一部屋だけ冷暖房しても隣接する部屋に逃げていく熱量の方が外に逃げる熱量の2倍以上、超高断熱住宅なら3倍以上抜けていくという実態を断熱に詳しい方でもご存じない方が多いです。(高断熱化するほど外に逃げる熱量は激減するのに対し、隣室への熱移動量は変わらないから倍率だけあがる)

〜中略〜

「高断熱住宅において「一部屋だけ暖房しよう」というようなことをいう方は、一部屋だけ暖房するときの隣室への熱移動を計算されたことがない方だと思われます。」

(引用ここまで)

という主旨の記事を書かれていました。

 

内容としてはそうだと思うのですが、何となく「???」な印象があり気になっていました。

「高断熱住宅」の基準がどこにあるか、ということを明確にされていないのもありますが

一部屋だけ暖房しよう、というような発想が出てくる理由を

「一部屋だけ暖房するときの熱移動を計算されたことがないから、」

としめくくっておられるところに違和感があるように思います。

このことは、いわゆる断熱のプロの方々には常識過ぎて議論にすらならないのでしょう。

 

「一部屋だけ暖房しよう」という発言や発想が出てくる背景としては

建物内の熱移動の知識があるかなしかも大事ですが

まず、実際に生活する中での順番としては

快適さを獲得したい空間と時間に対する光熱費(エネルギー量)が制約条件となっている場合が多いように思います。

断熱性能が低い建物で光熱費(エネルギー量)を一定にした時に問題となるのは

熱の移動の結果起こる、家の中の「温度ムラ」だと思います。

「温度ムラ」は健康や快適性にも大きく影響します。

仮に一部屋だけを同じように暖房した場合に

1)断熱性能がしっかりしていれば、

建物の外に向かって熱が失われるスピードがゆっくりなので

時間の経過とともに建物の中で熱が移動して

温度ムラが比較的短時間で解消されていく状態

2)断熱性能が中途半端であれば

建物の外に向かって熱がそれなりに失われながら

時間の経過とともに建物の中で熱が移動して

温度ムラがなかなか解消しない状態

3)断熱性能がないスカスカな家だと、

建物の外に向かって熱が失われるスピードが早すぎて

時間のけいかとともに建物の中で熱が移動したはじからどんどん外へ逃げて行って

暖房器具の前しかあったかくない、
温度ムラ極大の状態

というように整理になると思うのです。

暖房の能力や時間に左右されるのは大前提としたうえで。

この時、

1)を満たす家が高断熱住宅だ、と言われたらそうなんだと思います。

 

建物内の温度ムラがおきにくい=全館空調の状態

 

温度ムラがおきにくい=全館空調しているのとほぼ同じです。

今回、松尾さんから断熱基準の話は一切出てきません。

高断熱住宅とその更に上をいく超高断熱住宅の話だけです。

逆に言えば温度ムラがおこりやすい家は高断熱住宅とは呼べない、

という前提があるのかなぁと推測するわけです。

HEAT20 G2グレードの記事にも書いたように、

断熱仕様は今後全館空調を前提とした基準になる、

というような引用があったら、もっとわかりやすかったかもしれません。

(私が見逃しているだけかもしれません。。。)

ただ、実際には、光熱費が制約条件となっている場合に

上記の3)はさすがに最近の新築住宅ではありえませんが

2)のようなかたちで運用している方はいる、というかよくあるように思います。

 

全館空調を前提としなくても、それなりに快適になるケース

 

Ua値0.5〜0.7前後の家で個室暖房をおこなった場合、

断熱された躯体からの熱損失は多少なりとも少なくなっているため

換気による空気の移動や壁や天井等などから伝導して、室内で熱は移動します。

なので、

「『個室暖房(冷房)』をしている(つもりだ)けれど、

隣の部屋(上の階)や基礎断熱の床下空間もあたためて

結果的に全館暖房(冷房)に近い温熱環境になっている。」

という家も多いのではないでしょうか。

これが、松尾さんの指摘されている

===

「高断熱住宅において「一部屋だけ暖房しよう」というようなことをいう方は、一部屋だけ暖房するときの隣室への熱移動を計算されたことがない方だと思われます。」

===

の意味するところかなと。

狙って全館空調したときと同等の温熱環境を実現しようとすると
もう一段光熱費がかかってしまうが、

過ごしている部屋についてはじゅうぶん許容出来る快適さがある、という状態です。

その「狙って全館空調をした場合」との違いが何か、
と言われれば、「温度ムラ」の程度なのだと思います。

狙って全館空調をする場合、
たとえ暖房する部屋が局所的であっても
断熱性能と換気計画がちゃんとしていれば
家の部屋ごとの温度ムラがほとんどありません。

これが全館空調を最初から狙って設計した温熱環境と
個室暖房(冷房)で結果的にできた全館空調に近い温熱環境との間の
決定的な違いだと思います。

 

温度ムラをどう許容するか、どの程度許容できるのか

 

言い換えれば施主側は「温度ムラ」をどの程度許容できるかに応じて

経済的な観点で断熱の仕様を決めたり、暖房(冷房)方法を運用しているとも言えます。

あるいは設計的に意図的に「温度ムラ」を設けるようなケースもあると思います。

最近の都会的な家は別として、

例えば田舎普請で60坪を超えるような住宅で

普段ほとんど使わない大きな仏間がある場合などです。

 

部分間欠暖房として過ごす部屋だけがスピーディーにあたたまるほうが有利だったり、

建物の規模が大きいとHEAT20 G2までは必要ない(というか、そこまで予算をかけられない)
かわりに、冬向き、夏向きの部屋がある、ということはあり得ると思います。

隣室への熱の移動は起こりますが、使用する時間が短い場合などは
部分間欠暖房も限定的に有効というケースもあるように思います。

難しいのは、この温度ムラを許容出来る水準が、

ひとつひとつのご家族にとって丁度良い快適さとして示すことが難しいということです。

ご家族のライフスタイルやライフステージによっても変わってきます。

 

だからこそ岩前先生が仰られている「健康」に対する温熱環境の普遍的な尺度が意味をもってくるわけですが、

一方で「健康」の尺度(温熱環境)=その人にとっての「快適」の尺度(温熱環境)でもなく、
快適さは快適さで別の物差しが必要ということも、施主としては理解しておきたいところです。

このあたりは、超省エネ住宅で失敗しないために知っておきたい事。【前編】

にもまとめています。

現場で自分や家族が許容できる温度ムラの感覚を掴んでおくことは重要だと思います。

繰り返しになりますが、HEAT20 G1レベルならメインの居室だけ個別暖房(冷房)でも
実際には全館暖房に近いため、その程度の温度ムラなら許容できる
というケースは意外と多いと思います。

特に5地域など比較的温暖なエリアの場合
特に冷え込んだり雪が何日も続いた日のトイレや洗面、浴室以外は許容範囲と思います。

しかし逆にいえば、まさにその時その場所こそ、あたたかく過ごしたい場所とも言えます。

なのでせっかくこれから新築するならHEAT20 G2レベルを推しておきたいところです。

それにしても、今後ますます計算が求められる時代になることは間違いなさそうです。

今夜は室温26度、湿度56%、快適です。
日中は暑くなってきましたが、朝晩は外気が涼しくてよい季節になってきました。

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