知っておきたいこと デザイン

住まいを建てる時に知っておきたい「二つの要望」とは?

投稿日:2018年3月3日 更新日:

長男がつくったひな人形。にこにこです(^-^)。
幸せそうなおひな様夫婦ですね〜。

住まいづくりにおいて、夫婦の要望や関心が違うことはよくあります。

それは、相性とか性格とかの問題というよりは、
生きものとしての本質的な違いからきている
と考えた方が自然だと思います。

そのことを理解しておくと、
住まいづくりをすすめるうえでとても役立ちます。

■「二つの要望」とは何か。

住まいづくりにあたって数々の要望があるかと思います。

それらの要望は、大きく二つの種類に分けることができます。

・苦痛からの解放

・受容からの豊かさ

です。

いずれかに偏った家は、住み心地が悪くなる可能性が高くなります。

例えば、

省エネだけにこだわった家。

苦痛からの解放、の要望が優先され
受容からの豊かさ、にはつながりにくいかもしれません。

あまりにも有名な、業界最大手の工務店の

「家は、性能。」

というコピー。

どこか違和感を感じるのは、ある意味自然なことです。

住まいづくりに必要なことの、ひとつしか表現できていないからです。

・苦痛からの解放

・受容からの豊かさ

住まいは、二つの要望それぞれを満たすことが大切です。

住まいの提案を行う側の立場からみてみると、

・苦痛からの解放 = 問題解決  = デザイン

・受容からの豊かさ = 価値観提案 = アート

と整理することができます。

■「苦痛からの解放」は手段であるということ

言葉のとおりですが、
苦痛からの解放は目的ではなく手段であることが多いです。

デザイン=問題解決 と同じ理屈です。

例えば、

・断熱性を良くしたい
・遮音性を高めたい
・耐震性を高めたい
・書斎を設けたい
・お風呂の広さやグレードにこだわりたい
・外観にこだわりたい
・予算どおりにすすめたい

こういった要望は、苦痛からの解放を意図しています。

これらの要望をかなえた先に、真の目的があります。

・健康な暮らしをしたい
・仕事から帰ってホッとしたい
・朝、何にも邪魔されず寝ていたい
・家族の命を守りたい
・ひとりの時間が欲しい
・所有欲を満たしたい
・お金に縛られたくない

などです。

温熱環境を高めるためのパッシブデザイン、など
まさしく問題解決そのものです。

どちらか言うと、男性の方が要望をもっていたり
得意だったり、関心が高い傾向にあるように感じます。

「断熱性能強化と雨漏り」
「外観と雨漏り」

は、いずれも

「苦痛からの解放」になります。

どちらをトレードオフしなければならない場合、

より大きな苦痛から解放する方を優先すれば、

後悔することは少ないでしょう。

余談ですが、最近、「男前」なデザインが流行っていますが、
一体何が男前なのか。

上の考え方に照らしてみると

機能性や問題解決を重視している=男前

と捉えることができるように思います。

■「受容から得られる豊かさ」はそれ自体が目的や価値になる

「受容からえられる豊かさ」は、手段というよりも
それ自体が目的や価値になっていることが多いです。

そうすることで、豊かさを感じる。
他者との関係を受け入れることで、幸せを感じる。

モノの結果としてのコトではなく
コトそのものに焦点があたることが多いです。

・自然を感じる
・家族の気配が感じられる
・みんなで一緒にご飯をたべる、寝る
・だんらんの場所を設ける
・片付けしやすい収納にする
・身だしなみが確認できる場所を設ける
・設備の清掃性にこだわる
・窓からの風景を大切にする

など

・時間の使い方の選択肢が増える。
・家族や他人のために自分の時間を使う。
・外部との関わりの中に豊かさを見いだす。

こういったアプローチは、
どちらかいうと女性の方が要望として持っていたり、
得意とする領域であることが多いように思います。

■要望をふたつの視点でみてみる

例えば、身近な例でいくと薪ストーブがあります。

あこがれで設置する薪ストーブを
結局火をつけたり世話をするのは、相方だったりすることもあります。

もともと薪ストーブは暖をとる、という問題解決の手段ですが
薪をくべる手間の結果として、炎を楽しんだり家族があたたかく過ごせる、
というように受容から豊かさを感じる側面があるのです。

特に、今は男性と女性の社会的役割・家庭での役割が
多様化しています。

夫婦のいずれかが役割を果たす、ということではなく
それぞれが役割を担ったり、横断的に果たして行く必要があります。

そしてこれらの二つは、達成される時間軸が違います。

・「苦痛からの解放」は、家が建った時に結果が出ています。

・「受容からの豊かさ」については、住み始めてからがスタートです。

工務店の技術力で重要なのは前者。

生活が始まってからの夫婦の関係に重要なことは後者です。

「受容からの豊かさ」について、
どちらが主体的に役割を果たすのか、
家づくりの時に、話し合っておくことが大切です。

もちろん、暮らし始めてからも。

それを見越して、両方の提案ができる設計士や建築士が
優れた設計士や建築士だという印象があります。

■「二つの要望」は、依頼先を決める時にも使える

住まいづくりを依頼する先を決める時にも、このふたつの分類が役立ちます。

繰り返しになりまが、
住まいの提案を行う側の立場からみてみると、

・苦痛からの解放 = 問題解決  = デザイン

・受容からの豊かさ = 価値観提案 = アート

と整理することができます。

この軸をもっておくと、その要望を優先すべきか迷った時に
やるかやらないか判断がつきやすくなります。

特に、問題解決は家が建った時点で既に過去のことですが
受容からの豊かさ、価値観提案は
家が建った時点からがスタートだ、ということです。

また、つくり手側が、それらをちゃんと分けて考えられていないと
アートとデザインをはき違えたヒアリングや提案が出てきます。

ありがちなのが、施主に不便さを強いる提案がデザインだと思っている勘違い。

例えば、手すりのない階段。
問題解決の視点では、たいていの場合デザインではなくアートです。

茶室のにじり口のように背の低い入り口や幅のせまい通路などを
主寝室や収納の入口に提案する。

これもデザインではなく、アートです。

でもデザインを優先した提案だと思っていることが施主や設計側にも意外にあります。

で、採用してみると、怪我したり住みにくかったりする。

アートなのに、デザインとして提案しているから、ミスマッチが起こる典型です。

もうひとつ典型的なのが
「断熱性能を高めると、自然を感じられなくなる。」という理屈。

気持ちよさというのは、
断熱性能を高めることと、自然を感じることの両方で得られる場合、
両立できることなのですが

なぜか、すきま風が入るような家で
外気温と同じような温度変化がある暮らし

=自然と寄添う暮らし

=人間らしい暮らし

というように考えている方がいらっしゃいます。

それはきっとアートをデザインとして提案しているのでしょう。

ちなみにヒアリングには、それ以下のレベルもあります。

和室は6帖いりますか、とか

主審室は6帖で充分ですよ、とか

WICは1坪で充分ですか、とか

2階にトイレはいりますか、とか

直接的に広さや機能の確認・提案してくる担当にあたったら
やめておいたほうが良いと思います。

そのトークには、問題解決も価値観の提案もありません。

住まい手の生活のことを理解する気持ちも能力もない、
と言っているようなものです。

正直なところ水準以下の実力だと思います。

デザインとアートが混乱したり、
住んでから住みにくい住まいになる可能性が高いです。

■まとめ

家づくりの要望は

・苦痛からの解放 = 問題解決  = デザイン

・受容からの豊かさ = 価値観提案 = アート

の2種類があり、

それぞれ、

問題解決はデザインとして

価値観提案はアートとして

提案されることが多いです。

自分たちの要望がどちらに当てはまるのかを考えてみることが有効です。

住まいづくりはその両方を満たすことが大切だからです。

そして、
苦痛からの解放は家が建った時点で既に過去のことですが
受容からの豊かさは、家が建った時点からがスタートだ、
ということです。

苦痛からの解放に関するトラブルが、住んでから起こると大変なショックです。

例えば雨漏りや構造の欠陥がショックなのは、
苦痛を解放するはずの家が。苦痛を生み出す原因になるからです。

だから、要望の優先順位は、苦痛が大きいコトから解放すること。

そして、受容からの豊かさについては、
優先順位とお互いの果す役割について、夫婦で話し合うこと。
話し合い続けること。

そして、設計士や建築士からはそれらを理解したうえで
デザインとアートを区別した提案があること。

住んでからの住み心地や豊かさのカギは
そこにあると考えています。

最後までお読みいただきありがとうございます。
なにかひとつでも参考になることがあったなら嬉しいです。

今夜は室温21度、湿度44%です。
HR−Cのエコヌクールピコは自動2のひかえめ運転です。
加湿器は今年はもう仕舞いました。

先週、熱交換換気扇のトラブルがあったので、
それはまた改めて書こうと思います。

最後に、キャプション画像にしているこちらは
結婚した時に母親がつくってくれた雛人形です。

手のひらにコロンとのるほどのサイズで、夫婦で気に入っています。

こんなおだやかな表情で夫婦仲睦まじく暮らしたいものです。

-知っておきたいこと, デザイン

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