知っておきたいこと 熱交換換気システム

「ZEH時代の冷暖房考」新建ハウジングプラスワン11月号の感想。

投稿日:

新建ハウジングプラスワン。
大好きな専門情報誌のひとつです。

「ZEH時代の冷暖房考」

11月号も素晴らしい建築の表紙とともに、
つい注目してしまう見出しでしたね。

読んでみて、いかがでしたでしょうか。

「結局、なにがZEH時代の冷暖房なの?」

という印象を持った方、多かったのではないでしょうか。

この違和感の正体がなんなのか
自分の考えをまとめたので書いておこうと思います。

先に断っておきますが、批判ではありませんので。。

まず、この特集では

「ZEHで、冷暖房の何が変わるのか。」

明らかされていません。

具体的に言うと

「冷暖房は換気と一体的に考える。」

という視点での解説が不足しています。

さらに、

「まだ床下エアコンとりあげてるの?」

というのが率直な印象です。

床下エアコンのことは改めて書くとして

ZEH時代の冷暖房のポイントは換気にある

という論点で整理していきます。

■ZEHのコンセプト

「省エネ住宅に創エネを組み合わせることで
 化石エネルギーの使用をゼロにする。」

これを住まい手視点、
設計士や建築家の視点で考えると

「一定の断熱レベルをクリアしていれば

 再生可能エネルギーを適切に導入することで

 外皮性能の更なる向上だけではなく

 設備の能力や選択の自由度を高める方法で

 快適さの質を高めつつ

 化石エネルギーの消費をおさえた家づくりができる。」

と整理できます。

住まい手が求める快適さのカタチは多様で、
気候風土によっても変わります。

再生可能エネルギーを取りいれることで
このような多様性や独自性を尊重した
家づくりが可能になります。

おそらく、この記事でも
そう展開したかったのだと思います。

しかしながら見出しはZEHといいながら
取材自体はいまだに
高気密高断熱住宅の初期の考え方で
おこなわれている印象です。

それが、換気についての解説の不足です。

■空調=冷暖房+換気

全館暖房はもともとエネルギー消費量が多い特長があります。

断熱性能があがってくると建物から失われる量に対して
換気からのロスの影響も無視できなくなってきます。

(実際には、HEAT20 G1とG2の間ぐらいの性能が
全館空調には経済性の観点では必須と思います)

しかし、
熱交換換気システムを使うことで熱を回収し
新鮮空気とともに熱を各部屋に配ってくれて
快適性を高め、
かつエネルギー消費量が減る可能性が出てくる。

ここが、ZEH基準以上の住宅づくりのメイントピックだと思います。
全館空調するなら、ですけどね。

特集の最初に
新住協さんの素晴らしい事例を取り上げられていますが

前半のまとめは

「寒冷地ではFF式ストーブももっと見直されて良い。」

という???なまとめになっています。

それがZEHとどう関係するのか、よくわかりませんし
換気がどうなっているのかもわかりません。

寒冷地でFF式石油ストーブが熱源として優れていることは
いまさら言うまでもありません。

ヒートポンプに比較して光熱費や効率がどう変わるとか、

どの程度の断熱性能があれば
太陽光発電をどれだけのせると差し引きでゼロエネになるとか
換気まで突っ込んで取り上げて欲しかったです。

また後半では熱交換換気システムを紹介しているのに
ダクト式エアコンにフォーカスしてしまってます、、、

うーん、惜しいです。

なんで広い空間に配るための熱を
狭い空間で調整するのか。

そのメリットとデメリットに触れてほしいところです。

次に紹介されていた
「いばらきパッシブハウスの換気冷暖房」

こちらの事例も本当に素晴らしいのですが
その素晴らしさの半分ぐらいしか伝わってきません。

パッシブハウスジャパンの森みわさんの監修で
実際に快適に過ごされているとのこと。

流石だなぁ、と思います。

建設中に松尾設計室の松尾さんと一緒に
弾丸ツアーで見学させて頂いたのも良い思い出です。

この事例が素晴らしい点は

住まい手の快適さとエネルギー消費の2つの視点で

冷暖房と換気を一体的に考えたうえで

最小限の設備と消費エネルギーで実現している

ということに尽きます。

まさに熱交換換気システムの面目躍如。

高断熱高気密住宅と空調のいずれも最高峰といっても
言い過ぎではありません。

2.2kWの6畳用エアコン1台で全館空調ですからね。

スゴいです。

こういったパッシブハウスのような
ゴリゴリのスペシャル断熱でないと
このような空調は成立しないか、

というとそんなことはありません。

そこがまさにZEHの考え方とフィットするところだと
思うのですが、、、

断熱性能は最高グレードから少し下がるのと引き代えに
設備の能力を少し高めることで
同レベルの快適性を実現できます。

増えたエネルギーは自然エネルギーで賄う
という発想で対応できます。

例えばうちの場合
4.0kWのヒートポンプ1台で
換気も含めた全館空調が出来ており
そのエネルギーを太陽光発電でまかなっています。

エアコンでいうと11畳~14畳タイプです。

つまるところ

断熱性能を最高レベルまで高めなくても
再生可能エネルギーで賄える範囲で
換気も含めて考えることで
快適さを高いレベルで実現できる
全館空調ができるようになった。

こういったアプローチを可能にするのが
ZEHの考え方だと思いますし、

そのクリティカルな設備は熱交換換気システムです。

欲を言えば、いばらきパッシブハウスは2010年の竣工です。
もう7年も経過しています。

PAUL社の熱交換換気システムは全熱型なので湿気もやりとしします。

ニオイが戻らないのか、とかメンテナンスのことだったり
冬の湿度の状態や、風量と快適さの関係など
実際の使い心地や光熱費についても取り上げて欲しかったですね。

住まい手が欲しいのは

設備ではなくて

「快適さ」なので。

で、3つめの事例ですが

こういうシステムは既にありますよね、国産メーカーでも。

これをとりあげるなら
開放した室内にエアコンを設置して
ダクト式セントラル熱交換換気システムを組み合わせた場合と

このように囲った場合の効率の違いとか

汎用品を組み合わせた時に
音やニオイの問題がないのか、
など快適さについて解説して欲しかったですね。

うーん。もったいないです。

■結局、高気密高断熱住宅で何が問題として残ったのか

高気密高断熱住宅は

1)暖房や冷房のエネルギー消費量を
 設備機器の能力や性能に頼らずに減らせる

2)気流どめですきま風と壁内結露を防止

3)防湿層で壁内結露を防止

4)計画換気ができる

ということで快適さを高めることができました。

このうち、快適さとしてわかりやすいのは

断熱やパッシブデザイン、気流どめや防湿層でしょう。

しかし、
4)の計画換気の恩恵を受けられているところは
実際には少ないのかもしれません。

仕事で10年近く前から松尾設計室の松尾さんの設計された住宅づくりに
10棟以上関わってきましたが、冬に換気を止めているご家庭がほとんどです。

松尾さんの設計の問題と言いたいのではなく、むしろ逆で
換気計画は徹底していて最低限に近い換気量で計算されています。

それでも、快適さでみると
暖房と換気が切り離されている状態なのだということに
重要な示唆があるように思います。

新鮮空気が入ってくると寒い、ということです。

高気密高断熱住宅で
お得な深夜電力でエアコンや蓄熱暖房を使う場合
換気は止めている方もいるのではないでしょうか。

計算上の一次エネルギー消費量とか暖房負荷的にはOKということも大切ですが

換気が体感上の快適性を損なっている状態を
解決してはじめて、
本来の高気密高断熱住宅の快適さが得られるのでは、
と考えています。

それを完璧に実現しているのが
いばらきパッシブハウスの換気システムです。

でも、皆がパッシブハウスのような家を
建てられるわけではありません。

で、ZEHになるとどうなるのか。

繰り返しになりますが、
一定レベル以上の断熱性能があれば
熱交換換気システムで熱を回収して、
新鮮空気とともに各部屋に配ることが
有効なアプローチとなり得ます。

それが特集2、特集3の事例の
共通のトピックだということです。

事例1の温水放熱器による床下暖房でも
熱交換換気を組み合わせれば有効に機能します。

うちの家がまさにそれです。
ちなみに、松尾設計室で設計してもらいました。

暖房は温水による輻射パネルで、
1階はリビングダイニング、
2階は洗面脱衣室にしかついていませんが、
ちゃんと全室あたたかいです。

参考:冷え性対策に最適な暖房は?輻射式暖房で全館空調してみた感想。

■まとめ

ZEH時代の冷暖房には
熱交換換気システムの役割が大きくなると思います。

住まいが高気密化して計画換気が可能となる一方で

新鮮空気が適切に入ってくることと
温熱環境の快適さとが
両立できていないケースがありました。

熱をつくる。配る。

それを部屋単位で考えるのではなく
建物全体で考える。

繰り返しになりますが
冷暖房はそもそも空調の一部に過ぎません。

換気について快適性や経済性の検証を繰り返すことで
熱交換換気システムの重要性や信頼性は高まり
ユーザー、住まい手が選びやすくなると思います。

自分の家の換気システムについては
過去の記事でまとめていますのでよろしければ御覧ください。

参考:熱交換換気システムで光熱費節約できる?導入後の電気代と感想。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
長くなりましたが、何か役に立つ情報があったなら嬉しいです。

今夜は室温23.5度。湿度52%、快適です。外は雨です。
明日の朝はあたたかいと思うので、温水暖房は32度まで下げてます。

-知っておきたいこと, 熱交換換気システム

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